複雑、多様な社会の中で、人々は、進むべき道を見失ったまま暗い闇を流浪し、精神的な苦悩の末に、多様な心の病が急増していることはご承知の通りです。しかし、急増する心の病に対する精神医療体制は貧弱であると言わざるを得ません。依然として、閉鎖的、収容的な入院中心主義の精神医療が行われています。
精神病の原因として、脳の生物学的な要因が挙げられていますが、人間が精神的な活動を行う時、心理的、社会的な要因が働くことも明白な事実であります。従って、精神科治療に於いて、その人の心理、社会的な現実を観察・理解することが重要であると考えています。つまり、病む人の生活者としての営みを注視することが精神科治療の原点であると思います。
共に地域社会の中で生活している人と人の繋がりを元とした治療関係が最も重要な態度であると思います。精神科治療にとり共感関係という重要な展開が生まれると考えています。
精神科医療の体制は、病院精神医療から地域精神医療へと確実に変革が起こっています。私は、先駆的な医療を供給するよう郷の会の治療構造を堅固にしていくことを目指しています。